シドニーでの生活。

自分の人生の中で、こんなにゆったりと時を過ごす日々が来るとは、思っていませんでした。

 

学生時代は部活動やサークル活動に明け暮れ、寝る間を惜しんでバイトをし、

21歳で劇団に入ってからは、レッスンと稽古、食べていけない分、また寝る間を惜しんでバイトをし、

 

25歳くらいかな、やっと劇団と外注の仕事で食べていけるようになったのは。

それでも、常に2〜3本の現場を掛け持ちし、休日はなく、稽古場から稽古場へハシゴする毎日。

 

それが辛いとも全く思わないし、私より忙しい人はたくさんいるし、やりたくてやっていることだし(幸せなことに本当のこと)、

 

動いていないと死んでしまう回遊魚のようなものなので、日々幸せに、ストレスと言えば、自分の役者としての伸び悩みとかで、それはむしろ失くしたら廃業だし、あとたまに人間関係とか、でも深刻なことはほとんどなく、そんな生活をかれこれ5年程、続けていた時。

 

「あれ?今、芝居が楽しくないぞ?」と思った。9年間がむしゃらに芝居、踊り、歌と、レッスンや現場を踏んできながら、「前より下手になった」と感じたことはなかったし、時には微々たる進みでも、常に上に向かっていたのに、「この舞台で、成長できていない」と感じたばかりか、「芝居が楽しくない」という初めての感情に気づいてしまった。

 

なんたること。大好きなはずの芝居が。

 

深く考えることはしませんでした。

私は、「悩むのに時間をください」という言葉が嫌いです。物事には、「現状」そして、「継続」か「打開」の2つのstepで十分だと思っています。そしてこの二択の選択は、早ければ早い方が良い。もちろん、考えて、調べて、解ける難問なら時間は必要ですが、本気で考えたり調べたりするのは、1時間もあれば十分でしょう。それ以上の時間が必要なのは、「対人」の場合、つまり相手の出方などに左右される、駆け引きなんかの場合、自分の一存では決められないこと、くらいでしょうか。

 

よくあるのは、「降りてくる」待ち、「気づく」待ち、「見つける」待ち。芸術、創作活動なんかの場合は、これほんと、よくありますね。待ちます。考えても掴めるものじゃないから。私もしょっちゅうです。どっかにネタないかな、いい振付浮かばないかな、なんて。

でもこれは、「決断」には大して当てはまらないんじゃないかな。よく、「自分の気持ちに気づけた」とか聞きますけど、その気づき待ちの間に、誰かを待たせていたり、タイミングを逃したり、失うものの方が多いのでは?と思っちゃいます。そういう気づきは、ふっと降りてきた時に、めっけもんとして受け取るくらいでいいかなって。

 

そんなわけで、大好きな芝居から、一旦離れることにしました。スッと決めましたが、決して軽い気持ちではなく、この選択が良いと確信したからです(万が一間違っていても)。

理由としては、

・私が本気で芝居を嫌いになるはずがない

・今「面白くない」と感じた理由はわからないが、その状態で続けるより、せっかくなら何か面白いものを見つけよう

・私は絶対に芝居をやめないから、必ず戻ってくる

・そして戻ってきた時に、居場所はきっとある

 

居場所があるというのはうぬぼれているのではなく、戻った時に、必要とされる役者であれば良い、ということ。

 

決断してから4ヶ月かけて、新規の仕事を受けない、継続している仕事の引き継ぎ、休業前最後の舞台出演、劇団の休団手続きなどを終え、昨年の9月、シドニーに引っ越しました。

 

芝居休んでやりたいこと何かな?って思った時、英語?と思ったので、英語圏の国に来てみました。英語圏の中でオーストラリアを選んだのは、これから夏になる南半球だったから。寒いのが超絶苦手なのです。そしてシドニーにしたのは、ダンススタジオが複数あったから(一箇所しかないと、合わなかった時困る)。

 

シドニーに来てからの生活は、語学学校、ダンススタジオ、ボルダリングウイスキーバーでバイト、それから所属劇団のキャスティング等の仕事を引き続き。PCとSkypeとLineがあれば、ある程度の仕事は継続できると気づきました。今は学校とバイトは終了して、在宅ワークと自宅学習とダンスと飲み(笑)が生活のメインです。

 

そんな私の一日は、朝早め。7:30頃起床。

ベットの中で、夜のうちに来ていたメールチェック、日に一度更新されるJOJOの漫画をチェック(笑)、あと英語の勉強兼ねてとったHome Scape(家を作るゲーム)でせっせと家具を増やし(ここで出てくる英会話が意外と口語的に使えるものが多くて勉強になったり)、で、1時間くらいゴロゴロ。

学校へ行くシェアメイトたちが家を出る9:00前頃、むにゃむにゃと起き出して、シェアハウスの掃除。私はオーナーからの依頼で、家の掃除やらの管理もやってます。何ヶ月かで入れ替わるホームメイトのインスペクション(内見)、面接とかもやってます。

 

一通り終わったら、朝シャワー。趣味:湯船の私にとって、この国の生活で最も辛いのは、風呂という習慣がないこと。バスタブを使う習慣がないし、水代も高いらしい。そんなわけでもちろんシェアハウスでお湯を溜めるわけには行かない・・・悲しみ・・・。

 

目標10:30頃(もっと遅くなることもあるけど)、つまり日本の9:30、日本社会が始業する頃に、私も仕事開始。PCパチパチしたり、電話したり、仕事量は日によって違いますが、大体14:00くらいに終わることを目標にしています。基本は家でやるのが色々と都合がいいですが、たまに外でやったりもします。お気に入りは家の近くのホテルのラウンジ。誰でも入れるBarとの共有スペースでもあり、適度にふかふかなソファーとwifiと静けさが好き。あとは図書館も好き。学生がいっぱいいる大きいところではなく、小さな図書館を好んで使っています。cafeって手もあるんだけど、コーヒーとマフィンは好きじゃないのであまり使わず。

 

今日の分の仕事が終わったら、趣味の時間。まずは英語。がむしゃらにはやらず笑、のんびりマイペース。今は、読めるようになりたい戯曲があるので、その英語戯曲をひたすら直訳→意味を理解したら暗記→実際の上演映像に合わせて真似する、ってのをやってます。きっと効率よく勉強したいなら、いいテキストはたくさんあるのだろうけど、興味のない文章を読んでると続かないので、気長にやります。

 

あとはギター。シドニーに来てから、3曲ほど曲を作ったので(私は詩だけ!曲は仲良しの作曲家さんにつけてもらいました)、それを弾き語ってみたりしています。下手な上に、こっちでの練習用に買った安いギターなので、フレットも私には太すぎるし、弦も硬くて非常に弾きづらいですが、音楽に触れていられることはとても大事です。

 

そしてダンス。家から歩いて15分くらいの場所にある大きなダンススタジオに通っています。ジャンルもたくさんあるので、技術の向上と、筋力の継続、ですね。

 

自宅マンションに、ジムとプールとジャグジーとサウナがついているので、そこもたまに行きます。ジムは鏡貼りになっているので、基礎練するのにありがたいです。

 

夜は、シェアメイトと晩酌するか、友達とパブに行くか、一人でふらっと日本食居酒屋へ行くか。友達はかなり多国籍ですが(アジア、南米、ヨーロッパ)、その中でもかなり飲む方な私はちょっと不安になります。笑

 

書いていたら、なんだか結構盛りだくさんで生活してる風になっちゃいましたが、全然です。

全て、自分次第な緩やかな時間割なので、やりたい時にやりたいことをやっています。

 

日本にいた頃は、とにかく時間が足りなかったので、掃除も洗濯も最低限度、寝起きする場所があればいいし、キッチンも使ったことないから洗い物とかもない、家にいる時間がかなり短いし、なんなら帰らなくても、替えの下着とシャワーさえあれば寝るのはどこでも大丈夫、という感じでした。

 

「忙しい」と「興味ない」を言い訳に、健康と美容などには一切気を使っていませんでした。朝ごはんは食べない、昼は稽古場で軽く買食、夜は酒。洗顔はボディーソープでそのままだし、ケア用品など使ったことほぼなし、だったのですが…、最近は、ピーリングしてみたり、顔パックしてみたり、なんだか暇ゆえのケアが始まっています。ま、もちろん、興味が芽生えて買い揃えたのではなく、今までの舞台出演でお客様から頂いて眠っていた大量のケア用品的なものを実家から持ってきて、それをひたすら消費しているだけです。ケア欲よりはむしろ、片付け欲です(笑)。

 

最も大きな心の変化としては、「家っていいですね」ってこと。寝に帰るだけだった「家」という存在が、朝起きて、掃除して、料理して、身体ケアして、椅子に座って仕事して、団欒して、そんな使い方があるのねー!という感じ。

あ、料理に関して言っておくと、私は無知に等しいくらい料理はダメなので、「料理して」は語弊がありますね。基本的には、「餅を焼いて醤油をつけて海苔を巻く」「パスタを茹でて出来合いのたらこソースをかける」「米を炊いてふりかけをかけて食べる」、このくらいのものです。笑